サヴとライジュアのイカット
Savu_East Nusa Tenggara, 2011 |
サヴとライジュアのイカットについて、聞いた話と読んだ話し。
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2011年にサヴ島へ行った際に、イカットを織っているお家にお邪魔しました。
Savu_East Nusa Tenggara, 2011 |
Savu_East Nusa Tenggara, 2011 |
Savu_East Nusa Tenggara, 2011 |
Savu_East Nusa Tenggara, 2011 |
染める準備をした糸が吊るされたその下で、女性たちが織り機に糸を張っているところでした。
染め抜いた柄と柄の間を埋める無地の部分の糸を、あっちからこっちへと渡しています。
糸を、椰子殻に穴をあけたお椀に入れていました。
Savu_East Nusa Tenggara, 2011 |
花のモチーフの多いサヴのイカット。
このモチーフについて、渡辺万知子著『染織列島インドネシア』(2001年めこん)に記載があります。
母系社会のサヴでは、同じ祖先によってグループに別れ、決められた花の模様が家紋となる。
サルン(筒状に縫われたイカット)の幅の広い藍の無地の内側(上)の部分に家紋の主模様を大きく描く。
その模様から、どのグループに属しているのかが分かる。
サヴの模様は花鳥がメインで、他に水、星、鶏など。
王族の布にはパトラ(後述)、中国の龍、オランダの王冠などが、
男性の布には、花、鶏、ヤモリの足跡、ロンタル葉の水桶などの模様も用いられる。
のだそうです。
家ごとの模様については、サヴの隣のライジュア島でイカットを見せてくれたお家でも耳にしました。
Raijua_East Nusa Tenggara, 2018 |
模様によって、誰でも使っていい模様もあれば、その家族以外は用いてはならない模様もあるのだと。
このお家の家伝の図柄のノート。
Raijua_East Nusa Tenggara, 2018 |
Raijua_East Nusa Tenggara, 2018 |
このお宅ではおばあさんが現役で機織りをしていますが、半分は家族や親族に頼まれて織っているもの。
お嫁さんは「わたしは力が足りなくて織れない」のだと言います。
インドネシアの織り機は腰機がほとんどなので腰への負担は当然大きく、
かつトントンと力強く打たないと目が詰まったイカットが織り上がらないのです。
なので、この家庭での織り手はおばあさんのみ。
このおばあさんのイカットは、小鳥のモチーフがあったりしてかわいらしいのです。
Raijua_East Nusa Tenggara, 2018 |
Raijua_East Nusa Tenggara, 2018 |
Raijua_East Nusa Tenggara, 2018 |
Raijua_East Nusa Tenggara, 2018 |
Raijua_East Nusa Tenggara, 2018 |
Raijua_East Nusa Tenggara, 2018 |
このモチーフ構成は、サルンのもの。サルンは女性のためのものです。
男性たちは、スリムット(=ブランケット)と呼ばれる筒に縫われていない一枚布を身にまといます(女性も使います)。
Raijua_East Nusa Tenggara, 2018 |
手前側がスリムット。柄の印象がだいぶ変わります。
Savu_East Nusa Tenggara, 2018 |
サヴ島で見せてもらったスリムット。
ナマタ村では染料について話しを聞きました。
これもまたインドネシア語が苦手な彼女の説明だったので、あまり深くは聞けなかったのですが、
基本的には、フローレスの染め方とほぼ同じのようです。
まず黒。
インディゴを重ねて色を深め、濃くするためにクルンパンの実を殻ごと燃やして潰した灰を少々混ぜるのだそうです。
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クルンパンの実はアバの話しでロウソク代わりにされていたという木の実です。
赤は、ムンクドゥの根に、ロバを混ぜたもの。
この村の女性は、ロバは「スンバにしかない植物で、こうやって木の皮で丸めて売られている」と言っていました。
Savu_East Nusa Tenggara, 2018 |
青はインディゴ。染めるのに使う石灰は珊瑚を燃やしたもの。
Savu_East Nusa Tenggara, 2018 |
この村で作られるイカットは今でも手紡ぎの糸、天然染料のイカットでした。
Savu_East Nusa Tenggara, 2018 |
赤がきれいです。
このイカットは、家紋柄の上の筋に、浮き織で模様が入っています。
この浮き織入りは、ライジュアのおばあさんも織っていたもの。
Raijua_East Nusa Tenggara, 2018 |
Raijua_East Nusa Tenggara, 2018 |
Savu_East Nusa Tenggara, 2018 |
この浮き織にもなにか意味があるのではないかと思うのですが、また追々調べます。
Savu_East Nusa Tenggara, 2018 |
この中央のサルンの柄はパトラ柄。
パトラ柄とは、インドのグジャラートで織られている絹織物の柄に由来するモチーフ。
パトラは16世紀頃からインドネシアにも交易品として渡って始め、
舶来の高級品として、やがて王族貴族たちを象徴する織物となったのだそうです。
それを模したのがパトラ柄と呼ばれる大輪の花のようなモチーフで、イカットだけでなくバティックなどにもみられる華やかな柄です。
Savu_East Nusa Tenggara, 2018 |
これは、2010年くらいにスンバのイカットを見ていた際に見つけた古いサヴのイカットなのですが、これもパトラ柄。
Savu_East Nusa Tenggara, 2018 |
外来の柄としてもうひとつ、サヴでよく見られるのがこのローズ柄。バラですね。
元々サヴのイカットは花柄が多いのですが、その中でこれは西洋からの影響が見えるパターン。
また、裾の部分に三角の模様が並んでいるのも、サヴの柄の特徴なのだそうです。
パガール(=垣根)と呼ばれるこの三角、どういう意味があるのか訊ねたところ、
「花を植えたら柵で囲うだろう?」と返ってきました。ホントかどうかは疑問です。
このローズ柄のイカットはだいぶ古く、ほつれもでていたのですが、くたっと柔らかい手触りの布でした。
「中国の布だからね」
古い舶来品としての中国の布とは、つまり絹のこと。高級品だったんです。
もうひとつ、古い布として、ライジュアで見せてもらったのはこちら。
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カイン・ヒタム(=黒い布)と呼ばれるサルン。
光の加減で紫や青が出ていますが、実物はもっと暗くてほぼ黒のグラデーションくらいの印象。
これもサルンになっていて、女性用の布なのだそうです。
無地の染め布は逆に珍しい気がしました。
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東ヌサトゥンガラ州各地でイカットなど布を見るのが大好きなのですが、
地域性のある各地の柄の中で、サヴとライジュアのイカットは華麗で、文字通り華がある印象。
Savu_East Nusa Tenggara, 2018 |
それでいて、地の色は落ち着いた藍や黒なのがまた渋みがあっていいのです。
ついつい、集めたくなるタイプの布です。
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