サヴ島の話し

Savu_East Nusa Tenggara, 2018

東ヌサトゥンガラの島に行っていました。
他の島々から距離をおいてぽつんとある小さな島サヴと、その隣の更に小さな島ライジュア。
サヴは2011年に一度訪れていて、今回が2度目。ライジュアへは初めての訪問となりました。
今回と、前回の旅とで聞いた話しをいくつかに分けて。

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サヴ・ライジュアは石灰質の島。
土の薄い大地に森と呼べるほどの緑はなく、灌木と乾季には乾いてしまう草原が広がる風景です。
訪れたのは9月から10月にかけての、乾季も終盤に向かう、暑さが増してくる時期でした。

Savu_East Nusa Tenggara, 2018

サヴの低地の一部には水田がありますが、ほとんどの土地は保水力が低く、乾季に農作業は行えません。
そのため乾季のうちは、ロンタル(オウギヤシ)の樹液を集め、煮詰めた液糖を作って売り、
12月、雨が降り始める季節になると、トウモロコシなどを植え育てるのが、内陸のひとたちの暮らしだと言います。

Savu_East Nusa Tenggara, 2018

一方の海側では、漁業と、そしてライジュア島では、海藻の栽培が広く行われていました。

そんなサヴ・ライジュア。インドネシア国内最貧地域と言われます。

Savu_East Nusa Tenggara, 2018

サヴ島の町、セバ。
着陸する飛行機から見た様子です。
画面のこちら側では、それほど遠くない地点で田園風景に変わってしまうのですが、
それでもこの2本の道路が、サヴ・ライジュアの経済の中心地。一番の賑わいと活気を見せる場所です。
そして、2011年に来たときより、町の密度はあがっている印象です。

Savu_East Nusa Tenggara, 2018

2011年当時、サヴ・ライジュアは「郡」として独立したばかりで、
ガソリンスタンドはなく、病院は建設中で、舗装された道路はこのセバ周辺などごく一部のみでした。
現在は、プルタミナのスタンドができ、病院もでき、舗装路がどんどんと延びていて、四輪車の数もぐんと増えました。

その2011年の訪問時、セバの通りを歩いていて知り合ったサヴ人の男性がいます。
アバという、気のいいおじさん。今はもう50代も後半くらいでしょうか。
その後連絡が取れなくなっていたアバと、今回また、セバの通りで偶然再会しました。
そんなアバが話してくれた、彼の子どもの頃のサヴ。

「今の子どもたちは、うちの孫とかも、恵まれているよ。(米を)お腹いっぱい食べられるでしょう。
僕らが子どもの頃は、お腹いっぱいっていうのはなかった。
お腹いっぱい食べてしまったら、明日食べるものがないからね。
だから、ロンタルの液糖を食べてたんだ。それで病気もしなかった」

Savu_East Nusa Tenggara, 2018

「貧しかったからね、本当に貧しかったから。
お米は日に一度とか、中には、病気になった時にしか食べないっていうひともいた。
ごはんとして炊いて食べるんじゃなくてね、お粥にするんだ。普段は液糖。
液糖と、山の人なら少しの野菜。海辺の人なら少しの海藻。そうやって暮らしてた」

「バナナはね、皮も食べられるんだよ。
皮ごとバナナを茹でるでしょう。で、その半分を細かく刻んでね、ココナッツと液糖と混ぜて食べる。
残りの半分は、また次の時に食べる。皮は食べられるんだ」

「電気はないしね、ランプも灯油がいるし、ロウソクだってなかった。
ロウソクの代わりにね、クサンビ(セイロンオーク)の実を使ったんだ。
種を乾かして割って核を串に刺して燃やすんだ。ロウソクみたいに。
クルンパン(ピンポンノキの一種でジャワオリーブとも呼ばれる、写真)の実も同じように使えた」

Savu_East Nusa Tenggara, 2018

「この島で生きていくのは大変だからね、島から出て外で仕事を見つけるひとも多いよ。
クパン、スンバ、スラバヤまで行くひともいるね」

アバが特別に貧しい家庭だったという話しではなく、当時のサヴの人々の暮らしはおおむねそういうものだったようです。

バナナの皮を食べる、という話しは少しおどろきました。
バナナはインドネシア各地どこででも育ち、どこででも安定して手に入る果物だと思っていました。
なので、その皮は「捨てる」以外にイメージはなく、食べるという話しを聞いたのはこれが初めてでした。

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サヴ・ライジュアは、地図の赤い点の位置です。


インドネシアの端っこですね。

今でも決して経済的に恵まれているという地域ではありませんが、
一方で、染織りやロンタルの液糖など、土地ならではの文化は色濃い島です。
そんな島のあれこれについて、これからまとめていきますね。

Savu_East Nusa Tenggara, 2018


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