ワカトビの海の民
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Wakatobi_South East Sulawesi, 2015 |
ワカトビは、スラウェシ島の南東部に小さな粒のように連なる四つの島々。
2015年にこの島々を訪れた際に聞いた話し。
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地図の中央の、尻尾の長い獣ののような形をしたのがスラウェシ島で、その南東部の赤い丸の中に並んでいるのがワカトビ。
トゥカンブシ諸島のメインとなる(北から)ワンギワンギ島、カレドゥパ島、トミア島、ビノンコ島の頭の音を繋いだ呼称です。
国立公園に認定され、国内でも有数のダイブスポットとして知られている地域で、
実際ワカトビの海中世界は、のんびりとした島の人々の暮らしとは対照的な賑わいっぷりです。
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Wakatobi_South East Sulawesi, 2015 |
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Wakatobi_South East Sulawesi, 2015 |
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Wakatobi_South East Sulawesi, 2015 |
兄弟のように並んだ四つの島々、それぞれに島の人々の個性が違うのだと言います。
一番南端にあるビノンコ島民は漁師、
その隣のトミア島民はマルク地方やパプアなどインドネシア東方に船で行商に行く商売人。
カレドゥパの島民は外の地域でよく学び、知識を持って島に帰ってくる人々。
そして、空港もあるメインアイランドのワンギワンギの民は南東スラウェシでの商売を行う人々。
カレドゥパの人々以外は、船に乗り長く島を離れることも多いらしく、
例えばトミアでは、自前の船なり人の船の乗組員なりで、ジャワ島東部のスラバヤまで商品の買い付けに行き、
そのまま東インドネシアのアンボンやパプアに売りに行くため、
船乗りが島の家族の元に戻ってくるのは、断食明けのレバランの時のみという場合も多いのだと言います。
ちなみに、カレドゥパの現在の主な産業は海藻ファーミング。
漁の方は、このカレドゥパに海上集落を築いている、海の狩猟採集民であるバジャウ人が行っています。
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Wakatobi_South East Sulawesi, 2015 |
また、聞くところによると、ワンギワンギはインドネシア国内第二の規模の古着取り扱い地域なのだそうです。
島民は船でシンガポールまで行き、東インドネシアから運んだロタンや鳥を売り、代わりに古着を買って帰り、
それをワカトビから東インドネシアへ出荷していると言います。ちなみに全て、密輸です。
島を訪れる前から、ワカトビには華人がいないという話しを耳にしていました。
インドネシア各地、たいていどんな土地にも華人はいて、日用雑貨を売る店をやっていたりするものなのですが、
実際に訪れて、この船乗りたちの守備範囲や商売力を知ると、華人の入る余地がなかったのかなと思えてきます。
スラウェシの海の民というと、南スラウェシのブギス人が遠洋航海に長けた民として昔から知られていますが、
ワカトビの船乗りたちもなかなかのもの。
彼らにとってシンガポールは決して遠い異国ではなく、しっかりと自分たちの商売の圏内に組み込んでいるようです。
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Wakatobi_South East Sulawesi, 2015 |
ワンギワンギで知り合ったドライバーのアリは十五年間シンガポールで働いていたと言います。密入国の違法労働者として。
違法ながらもその働きぶりが認められたアリは、雇い主に正規雇用するからと言われ、
再び密航で一旦インドネシア領へ出国、パスポートを取得し正規ルートで再入国し、そこから五年働いたそう。
その際の貯金でインドネシアのリアウで英語やコンピューターを学び、今後の発展を見込んでワカトビに戻ってきたと話していました。
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海の民にとって、時に国境というのは、管理されずとも自分の意思でまたげるものだったりするようです。
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Wakatobi_South East Sulawesi, 2015 |
小さいながらも個性豊かな島たちで見聞きした話し、しばらく続きます。
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