スンバ島の伝統家屋と墓

Sumba_East Nusa Tenggara, 2011

東ヌサトゥンガラ州スンバ島。草葺き屋根の伝統家屋と、巨石墓で知られる島。
2011年から14年にかけての数回の訪問で聞いた話しと、目にしたもの。

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高床で、空に高く延びる屋根が特徴のスンバの伝統家屋。
その建物の構造概念は三層に分かれています。
床下は家畜の場所、床の上は人間の場所、そしてとんがり屋根の内部はマラプの場所。

Sumba_East Nusa Tenggara, 2011

マラプとは。
現在はキリスト教が広まっているスンバ島に、古くから伝わっていた土着信仰。
先祖たちを含めた精霊を意味するのだと言います。

同じ三層構造の伝統家屋でも、島の東部と西部では違いが見られます。
東部の伝統家屋は、一棟がとても大きく、複数の家族が暮らせるほど。

Sumba_East Nusa Tenggara, 2011

Sumba_East Nusa Tenggara, 2011

Sumba_East Nusa Tenggara, 2011

西部に向かうにつれて一棟あたりのサイズは小さくなり、
いくつかの家屋が集まって集落を成すようになります。一軒に暮らすのは一家族が基本。

Sumba_East Nusa Tenggara, 2011

山の上に集まる集落。

Sumba_East Nusa Tenggara, 2011

西端の集落の家屋は、極端なほど高い屋根の構造です。

Sumba_East Nusa Tenggara, 2013

家屋の中央には囲炉裏。
規模の大小はあれど、どこの家屋も中央に囲炉裏をおいて四方に部屋を配置しているのは同じです。

Sumba_East Nusa Tenggara, 2013

この西端の集落は、国内最大手の飲料水メーカーが持つ財団からの支援を受けて、建物を再建していました。
中央の柱には立派なレリーフ。どこの家屋でもあるものではなく、簡素なものも多いのですが。
柱の上部にネズミ返し。

Sumba_East Nusa Tenggara, 2011

東西ともに屋根のてっぺんに対の人形をつけています。
頭におだんごがついているのが女性。

集落には家屋だけではなく、大きな墓もあります。いくつも。

Sumba_East Nusa Tenggara, 2012

犬が乗って、洗濯物もおいてあるのが、墓石。

テーブル状のものが基本で、下に石棺、もしくは石棺を埋めた上に柱を立てて岩板を渡しています。
これら墓石として使われるのが切り出した一枚岩で、スンバには今もって巨石文化が生きていると言われる所以となっています。

現在はコンクリートで代用する場合も多いらしいのですが、本来は岩板を集落の住人たちで切り出し引いてくるもの。
数年前に、この岩を切り出す儀式があると呼ばれたことがありました(日程があわず不参加)。
この巨大な岩板をどうやって持ち上げるのか、疑問に思って訊ねたことがあります。
岩板を渡す前に、下の石棺や柱の部分を土で埋めてしまうのだそうです。
土で埋めて坂とし、その上に岩板を引き上げてから改めて下部を掘り出すと、こういうテーブル状になるのだそう。

スンバにおいて葬儀は非常に手間とお金のかかるもので、
それ故に、死者は通常一旦土葬し、時期を見て改めて正規の葬儀を行うのが通例だと言われます。
葬儀自体を目にしたことはないのですが、土葬されていた死者たちを掘り起こしているのに出くわしたことがあります。
数年を経ていると言われ、しかも複数人が埋葬されていた様子。
掘り起こした土の中からは、死者を包んでいたとおぼしき弔いのイカット(伝統絣)がのぞいていました。

テーブル状の墓石だけではなく、レリーフを施した石を使った墓標がある場合もあります。
この墓標にもまた、東西で差異が見られました。

東スンバの墓標は、トーテムを思わせる繊細で物語性のあるレリーフ。

Sumba_East Nusa Tenggara, 2011

Sumba_East Nusa Tenggara, 2011

Sumba_East Nusa Tenggara, 2011

Sumba_East Nusa Tenggara, 2011

Sumba_East Nusa Tenggara, 2012

Sumba_East Nusa Tenggara, 2011

Sumba_East Nusa Tenggara, 2011

Sumba_East Nusa Tenggara, 2011

人物を刻んでいるものもありますが、レリーフの頂上にあるのは動物が多い印象。
西スンバに向かうと、墓標は一層大きくなり、人物(故人)を描いたものが多くなります。
(墓石自体の時代が若いとも考えられるのですが)

Sumba_East Nusa Tenggara, 2011

Sumba_East Nusa Tenggara, 2011

2枚目のものは、十字架を刻んでいます。

また、中西部の集落には、巨大かつ、よりプリミティブなものも見られます。

Sumba_East Nusa Tenggara, 2013

Sumba_East Nusa Tenggara, 2013

これらのレリーフの頂上にあるのは、人物の姿をしてはいますが、故人というよりは、マラプなのではないかと思われます。
集落の墓石の間に時々小さな石像があり、それが「マラプ」なのだと教えられたことがあります。

Sumba_East Nusa Tenggara, 2011

Sumba_East Nusa Tenggara, 2012

Sumba_East Nusa Tenggara, 2012

故人が女性の場合、墓にはマモリのレリーフが刻まれる場合が多くあります。
マモリとは、スンバの人々にとっても女性の象徴。子宮の形を模したと思われ、装身具に見られるデザインです。

Sumba_East Nusa Tenggara, 2011

Sumba_East Nusa Tenggara, 2011

Sumba_East Nusa Tenggara, 2011

一方、男性の場合は、水牛のモチーフが用いられます。

Sumba_East Nusa Tenggara, 2011

水牛は、インドネシア各地で葬儀など大きな儀式の際に重用される生き物で、それはスンバも例外ではありません。
家屋の上がり口には、儀式で屠った水牛の角が飾られています。

Sumba_East Nusa Tenggara, 2011

Sumba_East Nusa Tenggara, 2012

Sumba_East Nusa Tenggara, 2012

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スンバ島は地図の赤い印のある島。



インドネシアの中でも、とりわけトライバル色が濃く、土地のオリジナル性を強く残した島でした。
ここ数年で、観光地として国内外から訪れる人が増えたようで、当時からまた少し変化しているのかもしれません。
伝統家屋や巨石の墓以外に、豪快な柄を染め出し織り上げるイカットや、騎馬祭りなどもある島。
それらについても、またいずれ。



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